Vol.12 港区役所 災害時の滞留者対策について

 

港区役所

防災課長 佐藤博史氏 インタビュー前編

INTERVIEW

2018/4/11

 

都内の主要駅が集まる区として、港区役所では災害時の滞留者対策など精力的に取り組まれています。今回は港区役所で防災課長を務められている佐藤博史氏に、普段行われている活動や、活動にかける想いについてお話を伺ってきました。

 

昼間人口約90万人から100万人にも及ぶ港区での防災

 

地球はたくさんの豊かな恵みを我々人類に与えてくれますが、時には牙を剥いて災害と言う形で襲ってきます。それも、人類を試すかのように、非常に絶妙なタイミングで襲ってくるわけです。特に日本は4つのプレートが重なっているところにあるので、災害をなくそうというのは諦めるべきで、来る災害に対して、いかに被害を小さくしたり、悲しみを小さくしたらいいかというところに焦点を当てています。

 

私も以前は地震が来たら避難所や学校に行けばいいんだという非常にシンプルな考えをもっていましたが、いざ、仕事という形で経験をしてみると、防災というのは防災学といっても過言ではないくらい日常に直結する学びだと実感しています。地震が来た時、避難所に行ったら何か良い事があるかというと決してそんなことはなく、人目の多い体育館の固い床の上で毛布1枚で寝泊りし、騒音があったり、臭いが気になったりする中で過ごさなければなりません。そういった現実を25万人の港区民に伝えていくためにどうすればいいのか。伝える立場として言えば言うほど、役所は自分たちが仕事をしないために「自分の命は自分で守れ」と言っているのではないかと受け取られてしまったり、なかなか上手く伝わっていないところもあって、常に葛藤はあります。

 

 

港区はとても特徴的な街で、住民は25万人、ただ昼間人口は約90万人から100万人と言われています。その100万人に対して何ができるのか。役所の職員は2000人程度ですが、その中で港区に住んでいる職員は約300人と15%しかいません。災害は休日や夜間のほうが発生率が高く、そうした時に何ができるのかと考えると、やはり限界がどうしても見えてきます。

 

そういった悩みを地域の企業さんに投げかけた時、非常に意識の高い企業さんたちから「自分たちも行政任せにはしていられない」、「自分たちで出来ることは何かやっていこうじゃないか、自分たちのお客様もいるし、自分たちの街だし、安全の為に尽くしていこうじゃないか」という声があがり、駅周辺滞留者対策協議会というものを組織してもらうことになりました。駅の近くの事業者たちが座長・副座長になり、そこに鉄道事業者が入り、我々はその事務局という形で運営会議を回すという役割になっています。

 

昼間人口約90万人から100万人にも及ぶ港区での防災

 

協議会は、現在8つの駅とエリアで同時に進行していますが、一番最初は平成20年に品川駅から始まりました。3.11よりももっと前から災害時に帰宅困難者というものが出るだろうという話は、大学の教授たちから上がっていて、そんな中で東京都で乗降者数の多いJR駅、品川・渋谷・新宿などといったところをモデルケースとして作ったのがスタートになります。現在は、JR4駅の新橋・浜松町・田町・品川。都営地下鉄の白金高輪・六本木。ゆりかもめの台場、もう1つは赤坂青山というエリアで協議会をもってもらっています。さらに虎ノ門エリアでも間もなく産声を上げるように準備を進めている最中です。港区は、全ての駅の乗降客が多いので、これほどの数になっていますが、他の区では恐らくこんなにないと思います。

 

 

各協議会では啓発イベントや訓練、マニュアル作りなど、それぞれ独自のルールを作ってもらって、どうやって地域の安全を繋げていくかという活動を行ってもらっています。その力というのは我々にとって非常にかけがえのない、なくてはならない力です。現在は8つの協議会を我々が支援するような形を取らせてもらっていますが、最終形としては、それぞれの協議会でそれぞれの駅の滞留者をさばいていただきたいという想いがあります。

 

災害時対応の正解は1つだけではなく、色々な角度から様々な答えが生まれてくると思っています。一番大事なのは、災害が来る前にいかにみんなで集まって話題にしながら意見交換ができるか。行政は入らない、事業者同士の会話が非常に大事だと考えています。自分たちの街は自分たちで守っていくんだという意識を持ってもらうために、我々は目立たないよう黒子に徹するようにしています。ただ、丸投げというわけではなく、何かあった時は我々も決して逃げない、困ったときにはすっと協力できるよう心掛けています。

 

最近「区が何とかしてくれるだろう」という声よりも「自分たちで何とかしよう」という声が増えてきていることを実感しています。よく町会長の方に「3日間生きていてください。4日目以降に来ますから」というと、「言っていること分かるよ。俺たちもしっかりやるから。」という風に言ってくださり、非常に心強い限りです。

 

 

後編に続く

 

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