Vol.2 英治出版株式会社「皆の気持ちがつながり ひとつの形になった」

 

英治出版株式会社

出版プロデューサー 下田理氏インタビュー前編

INTERVIEW

2017/09/06

2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興支援の一環として、英治出版株式会社とピースマインド・イープ株式会社の共同制作により被災地へ無償配布された小冊子『災害時のこころのケア』。今回は英治出版で出版プロデューサーを務める下田理氏に、作成に至った経緯や制作エピソードなどを伺いました。

 

 

東日本大震災発生後、3週間で制作

 

震災後、会社として何か出来ることはないか、何度か話し合いました。その時に、東北に親戚が多く、営業の仕事を通じて現地の書店さんとのつながりもあった社員が、被災地の方々の声を話してくれたのです。向こうでのニーズを直接聞いたところ、避難所生活の中で「こころのケア」が不足していることへの懸念が高いことがわかったそうです。彼は、企業向けクライシスケアを手掛けるピースマインド・イープさんが「震災時のケアのポイント」という情報をWeb上で公開していることを知っていました。しかし、インターネット接続もない被災地ではその情報にアクセスすることは叶いません。それなら出版社として何か出来るのではないか、という議論につながり、小冊子を作成して書店や避難所に配布する、というアイデアがまとまりました。

 

冊子の作成には、本当に色々な方々にご協力いただきました。ピースマインド・イープさんに相談したところ、二つ返事でご快諾くださいました。なるべく早くお届けしたいという思いから、震災発生から1ヶ月後の4月11日までに配布することを目標に進めていきました。

 

▲冊子内に登場するかわいいイラスト画

 

 

ピースマインド・イープさんが小冊子用のコンテンツを再編集し、「外国の方のためにできること」や「相談窓口」などの情報を付け足していきました。去年の熊本地震の際にはこの部分をアップデートして、配布しています。イラストや本文デザインなどは、弊社とご縁のあったイラストレーターやデザイナーの方がボランティアでご協力くださいました。「こういうイラスト表現は怖がらせてしまうかもしれないからやめておきましょう」など、ピースマインド・イープさんの専門家のご意見を参考にしながら編集していきました。

冊子も一見カラーに見えるかもしれませんが、コストを抑えるために表の部分はカラーで裏は一色刷りにしています。印刷は、大日本印刷株式会社さんがほぼ原価で引き受けてくださいました。

 

弊社の社員だけでなく、外部の方とも協働することで、ひとつの形にするために一体感が生まれました。東京にいらっしゃる方でも何かしたいという気持ちをお持ちの方も多くいらっしゃいますので、それがうまくつながったのが良かったと思っています。

 

 

現地から「ほしい」といわれたことがいちばん嬉しかった

 

配布の際には、取次会社大手の日本出版販売株式会社さんや、書店チェーンの紀伊國屋書店さんや三省堂書店さんが、自社の流通システムを活用して、各地の書店に届けてくださいました。書店さんでは専用のコーナーが設けられ、「ご自由にお取りください」という形で無償配布してくださいました。被災地だけでなく、災害への不安を感じる全国各地の書店でも配布しています。また、被災地で活動する非営利組織、学生団体や図書館、個人の方まで、本当に多くの方がご協力くださいました。

 

配布先から「少なくなってきたので、また送ってください」と追加の要望もありました。また、「こういう冊子があると聞いたのですが…」と直接お問い合わせいただくこともありました。お話を聞くと、その方の心のケアが圧倒的に足りていないということで。冊子として印刷する以上は、長期的に使えるものにしたいという想いがありましたので、そういった声に触れると、やはり作って良かったと思いました。

 

弊社のメンバーも個人的な活動で現地を訪れた際は小冊子を持って行きました。私自身も何度か石巻にがれき撤去などのボランティアとして行ったのですが、その際に避難所やボランティアセンターなどに冊子を置いて頂いたりしました。

 

 

 

PDF版『災害時のこころのケア』

 

 

 

後編へ続く

 

 

シェアする
Share on FacebookTweet about this on Twitter